伝統発酵食に恋して

伝統発酵食に恋して

フランスに暮らし、
帰国後も頻繁に行き来を繰り返してフランス人と食卓を共にする中、
私の消化力はどうも彼らのそれとは違うようだと感じるようになりました。

そして、「日本人の私を最もよい状態にしてくれる食ってなんだろう??」
と模索してきた結果、辿り着いた答えのひとつが伝統発酵食です。

日常のご飯にも、教室でお教えするレシピにも、
それらがよく登場する理由がここにあります。

ところで、日本とフランスの気候風土は大きく異なります。

我が国は高温多湿で湿潤。
フランスは乾燥地帯。

日本の伝統発酵食は「こうじ菌(カビの一種)」のおかげで成り立ってきました。

こうじ菌は湿潤な我が国の気候が大好き。
ヨーロッパのような乾燥した地では繁殖しません。

しょうゆ、みそ、日本酒、みりん、酢、甘酒は、
この気候風土だから存在できるこうじ菌のおかげで生まれたのです!

「こうじカビは我が国の国菌です。」

わたしが大まじめにこう言うと、ほとんどの生徒さんが笑います。

でも、これホントです。

フランスでは自然には生まれてこないし、繁殖できないんですよ。

日本人としてこの気候風土で最も健康でイキイキ暮らせる食のヒントは

・伝統発酵食(こうじ菌介在の味噌など)
・旬野菜
・米(未精製穀物)

食以外では、四季を楽しむ心とその変化に応じて暮らす工夫。

こういったところにあると私は思っています。

伝統発酵食に興味をもった私は、
思いがけない素晴らしい出会いに次々と恵まれました。

一つは長野県須坂市の「糀屋本藤醸造舗」さんとの出会い。
当主本藤さん(4代目)とは、
私が長野を旅している時にお店に立ち寄ったことが縁で、
以来10年近くものおつきあいです。
本藤家に伝わるこうじカビは優れものです!
私は白こうじを常に取り寄せ、家で甘酒を造って楽しんでいます。

定期的に、生徒さん達に甘酒の作り方をお教えし楽しい時間を持っています。

もう一つは愛知県岡崎市の八丁味噌「まるや」の浅井社長との出会い。
こちらは青山でひょんなことから出会って、
お互い欧州留学経験のあることで意気投合しました。
(浅井社長はドイツ留学経験者。)

まるやさんは680年もの歴史のある老舗。
徳川家康の産まれた岡崎城から八丁の距離にある味噌屋だから八丁味噌

と呼ばれます。
(正真正銘の八丁味噌は、まるや・かくきゅうの2軒のみです)

徳川家康も食べていたし、兵糧にもしていたという秘話が残っています。

浅井社長と出会ったとき、「それほどまでに発酵食に興味があるなら一度岡崎の蔵へ」と招いて下さったので、ありがたくお邪魔しました。
蔵では、何百年も変わらぬ石積みの風景や
歴史的書物(よくぞここまで保管してくださった!)を目にでき、心底感激しました。

まるやさんの繋がりから、正統派三河みりんの角谷文次郎商店、
白しょうゆの七福醸造さんの蔵も訪ね、発酵文化の真髄を味わわせて頂きました。

母国に脈々と受け継がれてきた豊かな食文化。
私はどんどんと伝統発酵食の魅力に惹き込まれています。

私の料理スタイルはフレンチ。でも、良質な食にするには伝統発酵食の存在は

無くてはならぬもの。

その生産者さん達とこうして巡り会い親しくなれたことは、
より一層伝統発酵食を大事にしようという思いを沸き起こしてくれます。
さらには私の創作意欲を刺激してくれています。

これからも様々な発想で日仏融合を試み、
美味しくて体に優しいマリアージュ・フレンチを創って行きます♪
※私の信頼する造り手さん達をこちらで紹介しています。